きゃっちぼーる
 そのうち、一哉の中に、これは自分が見ている夢なのだから自由にできるはずという考えが浮かんだ。

「カサが出ろ出ろ」

 冗談半分に願ってみるが、求めるものが現れる気配は無い。

「晴れになれ晴れになれ」

 晴れもしない。

「夢だから風邪はひかないでしょ」

 一哉はあきらめ、再び歩き始めようとしたが、そのとき気づいた。

 いつもなら、ここで、目が覚めるはずだった。

 






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