きゃっちぼーる
一哉の中に、不安と期待の混じった感情が生まれた。
どういうことだろう。自然と早足となってしまう。
そうして、街に伸びる一直線の石畳を進んでいると、前方に、なだらかな坂道が現れた。
「それにしても」
一哉は坂の前で立ち止まって振り返った。
「そういえば、どうして人が居ないんだろう」
今まで同じ夢を見て来て、そのことに気づかなかったのが不思議だった。
並んでいる建物は、屋根も、壁も、窓も、全部、新品のように輝いている。
だが、道を歩いている者など居ないし、建物から出て来る人も居ないし、犬や猫、音さえ無かった。
建物のドアノブには、オープンと赤字で書かれた看板がぶらさがっているのに、誰も居ない。
「廃墟だな」
一哉は思った言葉をそのまま口にしたが、胸の中に、灰色をした気配が広がったので考え直した。
「そうだ。作り物めいているんだ……魂がないと言うか」
そのことに気づいた一哉の目には、今、自分が見ているすべての光景が、何か異形の物体に思えて仕方なくなった。
一哉は、何か得体の知れない怪物が建物の影から自分を狙っているような感覚を覚えた。
だから、坂を一気に駆け上がった。
どういうことだろう。自然と早足となってしまう。
そうして、街に伸びる一直線の石畳を進んでいると、前方に、なだらかな坂道が現れた。
「それにしても」
一哉は坂の前で立ち止まって振り返った。
「そういえば、どうして人が居ないんだろう」
今まで同じ夢を見て来て、そのことに気づかなかったのが不思議だった。
並んでいる建物は、屋根も、壁も、窓も、全部、新品のように輝いている。
だが、道を歩いている者など居ないし、建物から出て来る人も居ないし、犬や猫、音さえ無かった。
建物のドアノブには、オープンと赤字で書かれた看板がぶらさがっているのに、誰も居ない。
「廃墟だな」
一哉は思った言葉をそのまま口にしたが、胸の中に、灰色をした気配が広がったので考え直した。
「そうだ。作り物めいているんだ……魂がないと言うか」
そのことに気づいた一哉の目には、今、自分が見ているすべての光景が、何か異形の物体に思えて仕方なくなった。
一哉は、何か得体の知れない怪物が建物の影から自分を狙っているような感覚を覚えた。
だから、坂を一気に駆け上がった。