きゃっちぼーる
「ちょっと屋上までつきあってくれない?」

事件から半年が経った頃、一哉は恵を誘った。

 放課後の教室で、いつものように成仏するよう説教がはじまろうとしていたときだ。

 恵は体をこわばらせ、一哉を見つめるだけになった。

 最初こそ力づくでも除霊しようと考えていたかもしれないが、今は諦めているようだった。

 無理も無い。

 一哉が人を殺しかけた現場を見たのだ。自分の力では、とても無理だと悟ったのだろう。

 恵は汗を垂らしながら、ぎこちなくうなずいた。
 






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