きゃっちぼーる
「種も仕掛けもありません。わからないけど開くんだ。世界はずいぶんいい加減にできているらしいよ。僕が汗を掻いているのが証拠。身体機能は停止しているのに。おかしいよね」

 一哉は屋上の風に髪を揺らしながら、恵を振り返って言った。

「認めない」

 恵は眉間に深いシワを寄せて、唇を震わせた。

 世界がいい加減にできているなどとあたしは認めませんと、今にも言いそうな表情だ。

 それでも、目の前で、実際、認められないことが起きている。

 恵のこぶしは、ぎりぎりと音が出そうなほど握られていた。







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