きゃっちぼーる
「ここからだと良く見える」

「何が見えるの」

 一哉の横に並んだ恵が口を開いた。   

「見ての通りだよ」

 一哉は淡々と答えた。

 恵が口を開きかけた瞬間、一哉は他人事のような口調でさえぎった。

「自殺したのは二十年前の今日だ」

 恵が口をつぐんだ。



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