きゃっちぼーる
 我慢しようにも我慢できないのか鏡が肩を震わせる。

 丸く柔らな曲線を描くほほには、うっすらと桃色が浮かんでいる。

「笑うなよ」 

 一哉は照れ隠しで言い、何も変わっていないなと思った。

 鏡は、鈍さも鋭さも超がつくほどの一流だ。

 久しぶりなのに固さなんてない。とても自然に、そこに立っている。

 一哉と同じく、鏡が手を上げた。
 
 わざと真似ているのだろう。

 







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