お姫様の作り方
やっぱりシオンだった。


手に空になったグラスを持っているのが何よりの証拠だ。

そしてあの怪訝そうな表情、敵を見るような目つき

間違いないあいつがやった。


これでリルがなぜ悲しそうな顔をしていたかがわかった。


きっとあたしの心だけでなくシオンの心も読んだんだろう。

そしてこうなる結果もわかっていたんだろう全部。

なぜ止めなかったかは、止めても無駄だともわかっていたんだろう。

あたしを止めても絶対に部屋から出た。

シオンを止めても絶対にあたしに水をかけていた・・・確実に・・・



あたしは自分で驚くぐらいに冷静だった。

いつものあたしだったらここで切れて

シオンに突っかかって行くだろう。


でも不思議と怒りは出てこなかった。

出てきたのはなぜか悲しみで・・・・

おかしいくらいに胸が締め付けられた。



―こんなこと前にもあった。


ふとそんな光景がフラッシュバックしてくる。

ないてるあたしがいる。


・・・だけど・・・


―オボエテナイ・・コレハナニ・・・・オモイダシタクナイ・・・アタマガイタイ・・・



気がつくとあたしは泣いていた。


思い出の中でも、今でも。

瞳から涙をぽろぽろ、ぽろぽろ零していた。
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