お姫様の作り方
しばらくの間沈黙が続く。


二人の間に流れる音は土砂降りの雨の音だけ。


あたしの頭の中は、シオンのことでいっぱいだ。

何で水をかけた相手を追いかけてくる必要があるんだ。

何であたしをかたくなに帰したがるんだ。

まぁあたしも帰りたいと思っているけれど。

第一これは夢だろう。

夢なんだからいづれ覚める。

自然に身を任せておけばそのうち出られるはずなのに・・・

なぜ?



「何で、夢なのにそんなにしつこく返したがるの、
いづれ目がさめて勝手にあたしは帰るじゃない。」


「ハァァー!」


シオンが大声でそう叫ぶ、ちょっと不機嫌そうだ。


「お前、何言ってんだよ!
ここが夢なわけないだろう、よく思い出してみろ!
俺に水かけられたとき冷たかっただろう。
フリアにとび蹴りされたとき痛かっただろう!
壁蹴った時だって痛かっただろう、いやあれは確実に痛かった。
壁が破損してたしな」


あたしはよく思い出してみる。

壁の破損は別として、水をかけられたときは余裕がなかったから覚えてない、

蹴ったときや蹴られたときは確かに痛かった気がする。


―じゃあこれは、本当に・・・・


私が深く考え込んでいると途中で邪魔が入った。


バリバリバリバリ


そんな音を立てて雷が地面へ落下する。


「きゃあぁぁー!」


あたしは、悲鳴を上げる。

雷が大の苦手で唯一と言っていいほどの弱点であったからだ。


雷はまだまだ続いている。



―集中しすぎて雷の存在に気づけないなんてあたしなんて馬鹿なんだ。


そう自分を罵りながらあたしは今だに悲鳴を上げ続けている。


その悲鳴に心配したのかシオンは

「オイ!どうしたんだ!
なかに入るぞ!」

と中に入ってきた。
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