いちえ
枯涙
見上げると、ギラギラと輝く太陽が恨めしく思える。
五月蝿い程の蝉達の大合唱が、耳に残るようだ。
梅雨は明け、長い夏休みはもう目の前だ。
「……あちい…あちい…あぁ〜っ!!あちい〜……」
「お前が一番暑苦しい」
昼下がりの午後、美春と俊ちゃんと慶兄を除くいつものメンバーで、私と瑠衣斗の大学で何故か大集合していた。
キャンパス内にある中庭を抜け、青々とした芝生や木々を横に抜け、宗太の家に向かう所だった。
「しょーがねえだろぉ〜。あちいモンはあちいんだ!!」
「だからお前が一番暑苦しいんだよ」
龍雅と宗太の暑苦しい言い合いを余所に、私は別の事で頭がいっぱいだった。
「おい、もも。奴が来る」
「…は?」
瑠衣斗の言葉に顔を上げると、物凄い勢いで突進してくる人物が目に入った。
「…あぁ〜…」
「ももーっ!!るぅーちゃ〜ん!!」
「…俺もかよ」
騒がしい声とその人物に、周りの温度が高くなった気がした。
「出たな!!おんなおとこ!!」
「龍ちゃんそれ妖怪みたいじゃないか!!僕は嫌だ!!」
ジュリの登場により、更に暑苦しくなってしまったようで、息がし辛い。
てか……ジュリってこんなキャラだったっけ?
何だか龍雅にもかぶるような、ちょっと違う気もするが、あえて気にしないでおこう。