いちえ



当たって砕ける……。



慶兄の言葉に、何だか胸が軽くなった気がした。


それくらいの意志を持ってもいんじゃないか。


失敗してもいいじゃないか。



「生きてれば何度だって出来るんだから。やる前から諦めててどーすんだ?もったいねーぞ」



本当に慶兄って、すごいね。


私の事をすごい見ててくれてる。


「うん。慶兄ありがとね」


「そんな感謝される事じゃねーよ」



私は慶兄に何もしていない。

何もしていないのに、ましてや別れた相手に、ここまで言ってくれる。



「優しすぎるよ。慶兄は」


「褒めても何も出ないぞ」


「そんなつもりで言ったんじゃないのに」


「はは、冗談。本気にすんなよ」




慶兄が笑ってくれるから、こうしていられるんだろう。


もし普通に別れてたら、私はどうなってただろう。


慶兄と私は、どうなってた?



「さーて、あいつらに押されないように頑張るか」


「慶兄なら大丈夫だよ」


「まあな?だてに歳くってねえし」


「…そうだよね」


「今おっさんとかまた思っただろ」


「うん」



悲しい別れの筈なのに、慶兄だったからこうして笑っていられる。


ありがとう。



今までありがとう………。


幸せだったよ。


「ホントに生意気だなあ」


「知ってる」





頑張るね。私。
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