いちえ



やっぱり…私来ない方が良かったじゃん。



虚しさが胸一杯に広がり、自然と会話から意識を遠ざけた。



慶兄に頑張るって約束したばっかなのに、さっそく挫けちゃいそうだよ。


慶兄……私、どうしたらいい?



平然を今までも装ってきたのに、今はそんな事もする余裕がない。


あからさまに、テンションの低い私を、みんなは不思議に思うに違いない。



みんなは、私の気持ちを知らないんだ。



「ねえ、どんな人?るぅは教えてくれないから代わりに教えて」



素直じゃないのは昔から。


押しつぶされそうな気持ちを飲み込んで、笑顔で話を振った。


「ええ〜…なっちゃん…」


「それは〜…うーん…物凄く答えにくい質問だなあ。なあるぅちゃん」


「…俺かよ」



結局質問の答えなんてなくて、うまく誤魔化されてしまった。


でも、それ以上は聞く気になれなかった。

と言うか、聞きたくなかった。


言いたくないなら言わなくていい。


聞けば聞くだけ、胸が切なさでいっぱいになっちゃうから。



嫉妬しちゃうから。




「……近い内言うよ」


「言う…じゃなくて教えるの間違いだと思うよ」


「……そうとも言う」




ずっと、そんな日が来なけりゃいいのに。


いつまでもこの関係を崩したくないのに。




きっと、今の自分は、酷く醜いのだろう。




こんな感情、いらないよ……。



私は再び、目線をグラスに落とした。
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