いちえ
「いいなあ。綺麗な空気が吸いてえ〜」
「土産はビニールに空気入れて持ってきてやろうか」
夏希の言葉に、嫌みを言う瑠衣斗を純平が笑う。
低レベルすぎるやりとりに、思わず鼻で笑ってしまった。
るぅなら本気でやりかねないなぁ。
思考回路なにげにお子様だもんね。
とは絶対に言わないけども。
しまいには、川の水をペットボトルに入れて持ってきてやるやら、土を持ってきてやるやら、訳の分からない意地の張り合いが始まってしまった。
私もたいがい負けず嫌いだと思うけど……るぅもたいがいだと思う。
「楽しみだなぁ。そんなたくさんのお土産」
「絶対受け取れよ」
「絶対持ってきてなあ♪」
完璧に乗せられてしまった瑠衣斗を、止める気はさらさらない。
だって面白いし。
「私は普通にお土産買ってくるね」
「お、ありがとなあ〜」
不安と期待、そして、ほんの少しだけの寂しさ。
この寂しさは、きっと慶兄に対するものなんだろう。
少しだけなのに、やたらとその存在感は大きく、胸を一瞬で寂しさで埋めてしまいそう。
私、どうすればいいの?どうしたいの?
慶兄との約束を、私は守りきれるのだろうか。