いちえ
結構な時間を運転している瑠衣斗は、運転しながらもまんべんなくみんなと話をしている。
相変わらず龍雅は何か食べているけど、場の雰囲気を一番引き立てている事は間違いない。
強い夏の日差しが、まだ昼前だというのにジリジリと熱い。
でも、遠くに灰色のまだまだ小さな雨雲が出来ている事に、何だか胸騒ぎを覚える。
時々起こる笑い声に、そんな胸騒ぎを掻き消そうと意識を逸らした。
「なあ〜るぅちゃん」
「何だよりゅうちゃん」
「…おめーら気持ちわりーよ」
そんなやり取りを、流れる景色を見ながら聞いていた。
少しずつ、私の住んでいた場所と変わる景色に、自然と目が行く。
いろんな場所で、たくさんの人がそれぞれの生活を送っているんだ。
そう思うと、人との出会いって本当に儚いモノだな。なんて思った。
こうして居られるのも、何かの偶然だったり、奇跡だったりするんだろうか。
もしかしたら、私はこの場所に居なかったかもしれないと思うと、改めて、奇跡なんじゃないかと思う。
「女の子紹介して。女の子♪」
自分の思考に浸っていた事を、龍雅の言葉により強制終了させられてしまった。
「女ぁ〜?俺が?」
「るぅの親父さんに紹介されても、困るだろ〜に♪」
チラリとと瑠衣斗に目を向けると、眉間に皺を寄せて軽く考えるようにしている。
少し長い髪をかき上げると、整った瑠衣斗の眉と色素の薄い瞳が露わになる。
夏の日差しを取り込んで、瞳がキラリと輝くようだ。
「居ない事もねーけど…」
「けど!?」
ワクワクしたような龍雅の声に、瑠衣斗は何故か意地悪く口元を上げた。
「居ねーな」
「はっ!?なぜ!?」
「俺みたいに地方行ってたりすんじゃね?」
あぁ…なるほど……。
でも……
「帰省してるかも知らねーし」
「……宗太慰めて」