いちえ
いたって普通のとりとめもない会話に、私だけきっと別な事を考えた。
るぅの地元の友達って、どんな人達なんだろう。
初恋の相手とか……居るのかな?
そう思うと、少しだけ切なく胸が疼く。
ただでさえ、瑠衣斗の好きな人が誰かも分からないのに、私は1人だけで悶々としてしまう。
そんな事ばかり考えている自分に、呆れて溜め息を吐きそうになる。
本当に私、るぅの事ばっか。これじゃあせっかくみんなと居る時間が、勿体無いよ。
そっと向けた視線に、瑠衣斗と数秒目が合う。
色素の薄い瞳に、何だか全てを悟られてしまいそうだったが、目を自分から逸らす事もできなかった。
「どうした?疲れた?ちょっと休憩するか」
返事をする前に、話を完結されてしまい何も言い返せなかった。
疲れた顔?してるのかな。
「るぅは?疲れた?」
「ん?俺?いや〜大丈夫。だけど、ちょっと外の空気吸いたいかな」
ふと気が付くと、周りは山に囲まれ、だいぶゆるい坂を登ってきたようだった。
「あ、川がある!!」
チラリと窓の外に首を巡らすと、キラキラと流れる川が目に入り、思わず声を上げた。
「すご〜い…綺麗〜」
「ぷっ…子供みてーだな」
そんな瑠衣斗の声に、パッと顔を向けた。
クスクスと肩を小さく揺すりながら、瑠衣斗はそんな私の様子に笑っている。
何だか恥ずかしくなり、口元をきつく結んで前にむき直した。
「そんなに笑わないでよ」
「はは、あ、そろそろサービスエリアだぞ」
何だかしっくりこないし、まだ何だか恥ずかしいままだけど、この際もういいや。