いちえ



そんな事を考えている内に、いつの間にかうとうとしてきた。


素直にその欲求に従うように、私はそっと目を閉じる。


体が軽くなっていくような感覚に、自分が今夢と現実の間に居るんだとそんな事を感じた。



そばに誰かが居てくれると言う安心感と、人の温もり。


片思いって、楽しいばかりじゃないけれど、その分感じる幸せはとても大きい。


またその反面、辛いと言う度合いも大きい。


気が休まる暇がない程、自分よりもその人の事ばっかり考えちゃうんだ。


そのたびに、一喜一憂して、疲れちゃう時もあって、諦めようと思う時もあって……。



でも、そんな簡単に諦められちゃう程、想いって簡単じゃない。


簡単に忘れられる程度なら、誰も泣いたりしない。


誰も簡単に諦められる事なんてない。



何もできない臆病者だけど、私は瑠衣斗に好きな人が居ても、諦められる事はないと思うんだ。


瑠衣斗のそばに居ても良い限り、そばに居れれば……。



明るい夢を見た。


眩しくて、思わず目を細めてしまうくらい白くて、でも目が外せなくて。


目を外したらいけない気がした。それ以前に、目が離せなかった。


何か大切な事が、思い出せそうで思い出せない、すごくもどかしい感覚だった。


誰かが私を抱き締めている。


誰なんだろう。


優しく背中を撫でてくれる手が、暖かい。


耳元で、何か囁いているのだけど、聞き取れない。


顔を確かめようと振り返ろうとしても、体が言う事を聞かない。


何か大切な事を思い出しそうで、思い出せない。


答えはすぐそばにあるのに、私には分からない。



一瞬、白くて明るい光が強くなった。



気が付くと、手の中の温もりだけがそこに残っていた。



私はその瞬間、意識を手放した。
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