いちえ
「寄ってく?」
「ううん。大丈夫」
「俺も特に」
宗太の問い掛けに、私と瑠衣斗がそう答えると、「龍雅は置いてく決定だな」なんて言って笑った。
そう言いながらも、携帯を取り出して龍雅に連絡をする宗太は、心底優しい。
いつもどんな場面でも、やっぱり宗太ってまとめ役で、みんなのお兄ちゃんみたい。
まとまりのないこの輪を、唯一まとめてしまう強者でもあるけど。
多分誰もが思っているだろう。
敵にしたら一番いけない人物。
あのほんわかとした雰囲気が、一瞬にして凍りつく瞬間を想像するだけでも恐ろしい。
てゆーか、想像できないし想像したくない。
本気でチビる自信あるもん。
「置いてくぞ〜」
楽しそうにそう一言告げると、宗太はパタンと携帯を畳んでしまった。
一瞬私は、そんな宗太が小悪魔に見えて仕方なかった。
「宗太休めよ。後は俺が運転する」
「とーぜん。じゃあももは前な。るぅの隣に龍雅は危険だしな」
「知ってる。うるさいのがもっとうるさくなっちゃうもん」
そんな悪口を言っていると、慌ただしく龍雅が戻ってきた。
車までやって来ると、龍雅は肩で息をするまま口をあけた。
「宗太が言うと冗談に聞こえねー!!!!」
……確かに。