いちえ
一気にざわつきが小さくなり、思わず中庭の辺りをじっと見つめた。
大人数ではないが、人数分のテーブルが用意してあり、着席している人も居るが立って雑談を交わす人も居た。
スピーカーの音が合図のように、みんなが一斉に席へと着席する。
それに従い、ぞろぞろと私達も席へと腰を降ろした。
司会者が自己紹介と軽く挨拶を始めていたが、耳に入ってこない。
すぐ近くには、美春と俊ちゃんの席があり、沢山の綺麗な花と一緒に、白いドレスとタキシードを着たクマのぬいぐるみがテーブルのサイドに置かれていた。
ホームパーティーのような雰囲気は、堅苦しい感じではなく、ほんわかとした雰囲気だ。
全てのテーブルに、白とピンクの花が飾られ、テーブルを賑やかに彩っていた。
息が詰まりそうな程、緊張と不安が入り混じり、何とも言えない感覚に息があがりそうだ。
「はは…もも緊張しすぎ」
「す、するよぉ〜…」
隣に座る慶兄が苦笑いしてそう言うが、緊張がほぐれる事はなかった。
ソワソワする私を、同じテーブルに座ったみんなが私を見て笑っていたが、気にもならなかった。
「ドレス上手くできてたじゃねえか。何が心配なんだよ」
「わ、分かんね」
瑠衣斗の言葉にも、まともに答える余裕すらない。
答えるもなにも、何だかやたらと頭が冴えているようで、いろいろな考えが頭の中を支配していた。
「ももが挙動不審とか…ありえねえ!!!!」
「保護者みてえだなあ」
もう、龍雅と宗太の声にも反応する余裕もなく、意味もなく司会者を睨み付けていた。
「もも太郎こえーよ」
「黙れ類人猿」
「だからレベル低過ぎだって」