いちえ
そんな瑠衣斗の様子に、思わずクスッと笑ってしまう。
私の反応に気付いたようで、チラリと横目で私を見た。
「何笑ってんだよ」
「帰りたいって…ここるぅのお家だしな〜って」
「…感じわりー」
嫌味のように、いーっとした顔を向けた瑠衣斗に、胸がポカポカする。
その時、私の膝の上に何か暖かい物が乗せられた。
パッと顔を向けると、大きなももちゃんの顔が乗せられ、クリクリとした優しい瞳が私を見上げていた。
尻尾を見ると、ブンブンと大きく振られている。
「どうしたの?退屈しちゃった?」
私の問いかけに、顔を持ち上げたももちゃんは、舌を出して息を弾ませている。
白いラインが顔の中心を割るように入っていて、顔立ちはとても凛々しく、優しい。
頭を撫でてやると、きちんと清潔にされているようで、毛並みなんかサラサラだ。
「気に入られたな」
「え?何で?」
瑠衣斗はそう言って、ふわりと笑った。
目を細め、口元を優しく持ち上げる様に、思わず見とれそうになる。
「こいつ、優しい性格だけど、俺ら家族以外の人にこんなくっついたりしないんだ」
「…へえ〜…嬉しい」
素直にそう口にした私は、ももちゃんの顔を両手で包み込むように挟んだ。
顔が大きすぎて、私の手なんか子供のようだ。
そんな呑気な事を考えていたら、また顔を舐められてしまった。