いちえ



「あ〜…。帰ってきちまったか…」


ポツリと言う瑠衣斗に、小さな不安が生まれる。


やっぱり、迷惑だったかな。


「ねえ、るぅ…何かゴメンネ?」


「え?」



一瞬、驚いたように目を向けた瑠衣斗から、慌ててパッと目を逸らしてしまった。


来てから言うのも何だけど、思ったことを口にした。


「慶兄に便乗しちゃったような物だし…何かやっぱり迷惑だったよなーって」


「あ…いや、そーゆうつもりじゃなくて」


「え?」



そう言うつもりじゃないなら、他に何か理由があるのかな?



唇をキュッと結んだ瑠衣斗は、何かを考えるようにしている。


答えをせかすつもりもなく、瑠衣斗の言葉を待った。



「うーん…うんとだな、何つーか…」


「うん?」



心なしか、顔が赤いのは気のせいだろうか。


何かを言いたそうにしながらも、言葉がまとまらない様子の瑠衣斗に、思わず笑いが漏れた。



「……何だよ」


「え?あ、ううん。るぅ、夕日で顔真っ赤っかだよ」



何となく、困らせているような気がした私は、話を逸らした。


「……それを言ったらももだって赤いぞ」


「そうなっちゃいますね」



でもきっと、瑠衣斗の赤さは夕日のせいではないだろう。


赤い理由は分からないけれど、こんな瑠衣斗もなかなか見れないし、何だか満足だ。



「んな事より、思い出したのかよ」
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