いちえ
そのまま瑠衣斗に付いて行くと、階段を降り、何故か玄関までやって来て、そのまま外に出た。
「ね、本当にどこ行くの?」
「だから付いて来いって」
少し肌寒い夜風に、体を抱くようにして両腕で庇う。
それとは別に、真っ暗な闇に再び恐怖が湧き上がる。
玄関を出てすぐ左手に向かうと、やって来た時に目にした隣接してある小屋とは言えないような、立派な小屋までやって来た。
少し奥に進と、瑠衣斗が灯りを点け、すると二階へと続く階段が現れた。
「足元気を付けろよ」
「うん」
そんな一言とともに、照明で照らされた階段を登る。
ここ、何なんだろう。
小さな疑問を抱えながらも、少しの不安と、大きな恐怖を隠すように、目前を歩く瑠衣斗の背中を見つめた。
歩いて行くと、途中で扉が現れ、そこから中に入ると、急かされるまま靴を脱ぎ、木の板敷きの上を歩く。
ギシギシと軋む音が、胸の鼓動と同調するようだ。
本当にここは何だろう。
不安に思いながらも、素直に瑠衣斗に従うしかない。
歩くにつれて、何かザアザアと言う音が大きくなっていく。
少し歩いた所で、ふと瑠衣斗が足を止めた。
釣られるように視線を上げると、目の前には大きな木の扉がある。
「はい、到着」
「……ここ何?」
そんな私の質問に、フッと一度笑うと、瑠衣斗が扉を開けた。
目の前に広がる光景に、私は目を見開いた。
「……すごい」
「家族風呂?貸し切り風呂っつーのかな」
ザアザアとする音の正体は、月明かりだけを受けた大きな川だった。
夜風が少し、強く吹き、私の髪を悪戯に浚う。
見上げた瑠衣斗は、背後にある月明かりにより、何か幻想的に浮かび上がっているようだった。