いちえ
そう言われると、瑠衣斗が言うように従うしかない。
うーん?髪が長いから二枚用意してくれたのかなあ?
そんな事を思っていると、隣からシャワーの音が届いてきた。
その音を合図に、私は慌てて着ている物を脱いだのだった。
やっぱり、モタモタしてたらるぅを待たせる事になってしまうだろうし。
そうすれば、またロクな事を言われないに違いない……。
壁を隔ててはいるが、何となく初めての環境や、隣の瑠衣斗に胸がドキドキとする。
目の前に広がる折角の景色も、これでは楽しむ余裕もない。
心地の良いシャワーのお湯に、隈無く全身を洗う。
屋外ともあって、シャワーを止めると風が冷たく感じる。
浴槽に湯船が張られていないのは、やっぱりここを使う人が居ないからだろう。
こうして、湯船が入っていない所を見ると、何だか寂しくも感じてしまう。
それでも、きちんと掃除の行き届いている所を見ると、おばさんかおじさんが手入れをしているのだろうか。
そんな事を思いながらも、手を休める事なくシャワーを済ませた。
一通り済ませた所で、タイミング良く瑠衣斗の声が私に届く。
「ももー、あとどんくらい〜?」
「今、髪と体洗い終わった所〜!!」
あとは体を拭いて、下着と寝巻きを着ればバッチリだ。
私は洗ったばかりの髪をアップに纏めると、使った桶などを元の位置に戻す。
何とか瑠衣斗とタイミングを合わせる事にホッとしていると、瑠衣斗から思い掛けない言葉が飛び出す。
「おし、じゃーそっち行くから」
……そっち…?
そっち…………こっち!?
「なんでえ!?」