いちえ
「とりあえず、疲れただろう?寝るか」
乱れた髪のままの瑠衣斗に、ドキドキと胸が高鳴る。
ほのかに香る同じ石鹸の香りに、過剰に反応してしまう。
「うん、でも…」
顔を背けるように見渡した室内には、やっぱり大の字で眠る宗太と龍雅。
そんな室内の隅っこでは、ももちゃんが目を閉じてうつ伏せに伏せている。
「一緒に寝る?」
そんな言葉に、私は「えっ」と顔を向ける。
それは…どう……。
固まる私に向かって、ふわりと優しく笑ってみせる瑠衣斗の瞳に、釘付けになる。
思わず見つめ返してしまい、ハッとして瞬きをして意識を覚醒させた。
「ね…寝るけど寝ないっ」
「…え?」
「一緒の部屋で寝るっ」
「お化け怖いの?」
必死の私の言葉すら、そんな単語で笑われてしまう。
確かに怖いけど。てゆーかせっかく忘れてたのに。
ムカつくのに、胸は反比例するように瑠衣斗の笑顔にときめく。
本当に現金だな…私。
唇を結んだままの私を見据えて、小さく笑いながら瑠衣斗が立ち上がると、龍を足蹴にしながら布団を引きずり出す。
「俺はコレ使うから、そっちの使えよ」
「…分かった」
僅かなスペースに布団を並べ、瑠衣斗と隣り合うようにして布団へ入った。
室内は小さな豆電球に落とされ、テレビの音声も今は消えている。
静かになった室内に、虫達やカエルの鳴き声が届き、それが心地良い。
時折聞こえてくる龍雅の寝言に、話し掛けたくなるけど。
「寝れるか?」
ポツリと私の耳に届いた声に、体を向ける。
小さな豆電球の光が写り込んだ瑠衣斗の瞳には、キラリと輝いているようだ。