いちえ
暖胸
「ももって変な奴とよく知り合いになるよな」
それは…誰の事を言っているのだろう。
何となく思い当たる節がある私は、口を横に結んだ。
石段から立ち上がった瑠衣斗に続き、私も立ち上がる。
木々から差し込む光が、瑠衣斗を真上から照らし、髪や瞳を明るくする。
「初め、ジュリの名前聞いたときは驚いた」
クスクスと笑う瑠衣斗の言葉に、私は疑問が浮かぶだけだ。
「何で?そんなに驚く事…って、ジュリって何かあるの?」
そう言えば、初めてジュリと知り合って、瑠衣斗に聞きたい事があると言われた事を思い出した。
結局、いろいろと重なったり濁らされたりで、その真相は分からないままになってしまったんだ。
並んで来た道を引き返すように、光の柱を潜って歩く。
だいぶ気温が上がってきて、雨のせいか少し湿気を含んだ風が、サラサラと私の頬を撫でていく。
「いや、まあ…噂みたいなモンだから」
「噂…?どんな?てゆーか、前に聞きたい事あるって…」
大きな鳥居をくぐり抜ける頃には、眩しい程の日差しに目を細めた。
雨に濡れた道や田んぼが、光を反射し、キラキラとどこまでも輝いている。
「そうだなあ…例えば、変な仕事を女に紹介してるとか…とにかく、手が早いとか…だな」
「そんな噂があるの?だから…私に聞きたい事があるって…」
そうだったんだ。だからあの時、ジュリに何か言われたか聞いてきたんだ。
何となく、気持ちが重くなるような気がして、瑠衣斗を見上げた。
そんな私の気持ちとは対照的に、瑠衣斗が優しく微笑む。
「噂は噂だろう?あいつはあいつだ」