いちえ
車を降りて反対側へと回ると、小綺麗な和風の佇まいのお店の駐車場のようだ。
出入り口の前には、ズラリと色鮮やかな花が植わっており、綺麗に手入れされている。
お店の端には、店に寄り添うようにして白樺の華奢な木がワンポイントのように植わっていた。
「お洒落なお店だね〜…」
うっとりとしたように、私の口から自然と出た言葉に、何故か瑠衣斗は冴えない表情のままだ。
…ん?何だろう。
「ここ?入るのか?」
「ちょっと寄り道」
宗太の言葉に瑠衣斗はそう答えると、躊躇する事もないままお店へと歩いていく。
それに何の疑問もないように続く宗太と龍雅に続き、慌てて私もあとを追った。
枝をいっぱいに広げた白樺の木を潜るように、瑠衣斗がそのまま店内へと入った途端、大きな声が外まで響いてくる。
「あらー!!ちょっと久しぶりじゃないの〜」
「いつ帰ったのよ!!んま〜大きくなって〜!!」
「はいはい…」
入り口では、宗太と龍雅が立ち止まっているせいで、中の様子が伺えず、何がおきているのか分からない。
いつもの適当な瑠衣斗の返事と、知り合いらしい人達が一斉に話しかけている会話に、何となく何も言えないでいる。
「今日はツレを連れてきたから…また今度……」
「あらやだっ!!男前が2人も!!」
瑠衣斗が言い切る前に、話題は宗太と龍雅に移ったようだ。
押され気味な感じが手にとって分かるようで、思わず目の前の宗太と龍雅を見上げた。
表情が見えないものだから、どんな顔をしているかは分からないが、さすがに戸惑っている様子が安易に感じられる。
「相変わらず瑠衣は女っ気のない子ねえ!!」
そんな言葉に、何となく顔を出し辛くなったのは言うまでもない。