いちえ
「まあまあ、とりあえず中に入ってよ」
その時、聞き覚えのある声に宗太と龍雅の隙間から顔を覗かせた。
瑠衣斗の隣で尻尾を振るももちゃんが見えると、その先に見覚えのある顔に目を見開いた。
「由良さんだ!!」
私の声に反応するように、苦笑いしていた由良さんがこちらに目を向ける。
目が合うと、大きな瞳を細くして、私に手を振った。
「ももちゃ〜ん!!おはよー!!」
「おはようございます」
気を使ってか、宗太と龍雅が間を開けてくれて、やっと店内が見える。
和風ベースの店内は、こじゃれたカフェのようで、結構な人で賑わっている。
ペコリと頭を下げてから顔を上げると、改めて視線を前に向けた途端、私に注がれる沢山の視線にフリーズした。
何故見られているのか分からす、瞬きをやたらと繰り返す。
何となく恥ずかしくて、両脇の宗太と龍雅に助けを求めた。
「えっ、なっ…何だろ」
戸惑う私に向かって、宗太と龍雅も戸惑って視線を向けている。
…私何か変!?
「まぁ〜!!綺麗な子ねえ!!」
「ちょっと瑠衣!!何で早く紹介しないのよ!!」
「いっぺんに喋んなよ…」
何を言うでもなく、再び沢山の人達によって店内が賑やかになる。
押し問答のようになってしまった状況に、ただ呆然と宗太と龍雅と共に、店内に入りきらないまま立ち尽くす。
そんなやり取りに、私を含む全員が、ただ圧倒されて立ち尽くしていたのだった。