いちえ



「ちょっと2人とも、話がズレてるよ」


笑いながら言う由良さんは、瑠衣斗と同じ色素の薄い瞳を細め、柔らかく笑う。


そんな笑顔に、慶兄の面影を垣間見る。



やっぱり兄妹なんだなあ。



ぼんやりとそんな事を考え、思い出したように少し胸がキシキシと痛む。



切ない記憶が蘇るように、慶兄の優しい笑顔がたくさん脳裏に浮かぶ。


「とにかく、余計なお節介とかすんなよ」



そんな私の思考を打ち切るように、瑠衣斗の言葉により現実に戻される。


ハッと意識を覚醒させると、いつのまにか消えていた笑顔を取り繕った。


「お節介じゃないのに。ねえ?」


「そうよお。ねえ?」



由良さんとおばさんは、そう言いながらも実に楽しそうだ。


ありがたいけれど、できれば私も瑠衣斗と同じ意見だ。


瑠衣斗の同級生にも会ってみたいし、由良さんのお友達とも会ってはみたいけれど、それは結局全て瑠衣斗に繋がってしまう。


最終的には、私の知らない瑠衣斗の事を、知りたいだけなんだ。



「ね、ももちゃんはどう思ってるの?」



突然振られた話に、一瞬ドキリと心臓が跳ねる。



「え…えーと…そうですね…」



どうしよう。何か断るのも悪い気がしてならないんだけど。


期待に満ちた瞳で私を見つめる由良さんとおばさんに、私は遠慮がちに口を開いた。
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