いちえ
「あの…るぅ…も、一緒にじゃ…ダメですか…?」
下から伺うようにして、おばさんと由良さんを見比べてみる。
2人は一瞬目を大きく見開くと、次の瞬間には笑顔を向けてくれる。
「さすがに、いきなり2人きり…って訳にはいかないわよねえ」
「こんな狭い町なら、どこかで会いそうだしね」
良かった…。私ってなんでこう…断れない性格なんだろう。
1人でこっそりとホッと息を吐き、ふと視線を感じて顔を上げる。
バッチリと瑠衣斗と目が合い、頭から大量の冷や汗が吹き出る感覚に口を結ぶ。
いつから見られていたかも分からずに、顔が自然と引きつる。
そんな私にお構いなしに、瑠衣斗が髪をかきあげながら口を開いた。
「とりあえず、勝手にももを連れ回すなよな」
何だか不機嫌そうに言う瑠衣斗の声は、周りの沢山の声にかき消されそうで、そんな中でも私の耳にしっかりと届く。
「なんでそんな事瑠衣が決めるのよー」
少し含み笑いをしたような由良さんが、からかうようにそう言う。
そんな言葉に少し詰まった瑠衣斗は、手元に視線を落とした後、由良さんに視線を向けた
「ちっせーから、探すの大変なんだよ」
トクン…と、胸が鼓動する。
私からは、瑠衣斗がどんな顔をしているかは分からない。
でも、唯一気付いた事は、髪から覗く耳が、ほんのりと赤く染まっている事だ。
私と瑠衣斗にしか分からない話に、由良さんとおばさんはまた何かを言ったようだったが、私にはそれすら耳に入ってこなかった。
切なく縮む胸の痛みに、私は唇をグッと結んだ。