いちえ
それに気付いたのか、綺麗に縦皺を眉間に寄せた瑠衣斗が、いかにも怪訝そうに宗太を振り向く。
車内はだいぶエアコンが効いてきたせいか、しっとりと汗で濡れた箇所を冷やしていく。
珍しく何も言わずにいる龍雅に、やっぱり何かおかしいと思い出した時に、ようやく宗太が口を開いた。
「相当悪かったんだって?松風クン」
「…ぶっ。だははっ!!!!悪行してんのに秀才とかさすがるぅだな!!」
「!?」
えっ。相当…悪かった……?って、るぅが?
顔を面白い程強ばらせた瑠衣斗は、ひきつるように片方の口元を引き上げる。
よく分からない表情の瑠衣斗を、目を軽く見開いて見つめる私に向かい、瑠衣斗は目だけで私を捉える。
すぐにそらされてしまったけれども、その瞳は動揺で揺れていた。
「…だから……頭金髪だったんだあ…」
初めの印象は、怖そうな人。
そして
ガラ悪そう。
でも、八重歯が印象的な笑顔は、今でも覚えている。
ポツリと言った私とは視線も合わせないまま、何だかどう感情を表現したらいいのか分からないような瑠衣斗は、宗太と龍雅の笑い声を乗せたまま車を出したのだった。
「誰がんな事吹き込んだんだよ」
不機嫌極まりない。そう言っているようにも聞こえる瑠衣斗の声は、低くやたらと響いてくる。
「常連さん…」
「……どんな」
「もとい…その他ほとんど」
「…………」