いちえ
鈍感鈍感って…るぅみたいに騒がれてたりしてないし。
…ん?と、言う事は……。
隣で運転をしながら余裕に笑う瑠衣斗に向かって、私は偉そうに口を開いてやった。
だったらるぅだって!!
「じゃあ、るぅだって鈍感じゃない」
「は?俺は興味ねえだけ」
何か…上手く逃げられちゃったような…。
そう少し気弱になってしまいそうな所を、悔しさで踏ん張ってみた。
「じゃっ、じゃあ、女の子に騒がれてた事…知ってたの?」
「…騒がれてた?…ありゃうっせえだけだ。興味ねえな」
何か…悔しい。
何だ。騒がれていた事、気付いてたんだ。
ちょっと言い方は冷たいけど、毎日騒がれてたらそうも思っちゃうのかも。
「龍雅…だったら毎日日替わりでデートだね」
「トーゼン。ってオイ!!俺をそんな遊び人みてえに言うなあ!!」
そんな風に誤魔化しつつも、私は内心嬉しかった。
瑠衣斗の事が好きで、毎日のように様子を見に来ていた子には悪いが、瑠衣斗の言葉に私は簡単に気持ちが浮上する。
私と美春は、瑠衣斗の中で他の子のようにではなく、ちゃんと見てくれていたという事に嬉しくなる。
私達以外の人には、必要最低限関わらなかった瑠衣斗の理由を、少しだけ垣間見る事ができた気がした。
「だから、俺は鈍感じゃねえ。ももは鈍感すぎる」
「何?みんなしてそう思ってたの?」
そんな私に向かって、再び宗太が楽しそうに笑いながら言う。
「思ってたんじゃなくて、思ってる」