いちえ
想煙
「りゅうちゃんは明日からお手伝い行くの?」
「はい!!頑張ってきます!!彼女できちゃうかもです!!」
瑠衣斗の家で、少し遅い夕飯をみんなで頂きながら、おばさんの言葉に力強く答えた龍雅に、私を含む宗太と瑠衣斗が呆れるように溜め息を吐いたのは言うまでもない。
あれから、瑠衣斗は「牛と親睦を深めてくる」と、よく分からない事を言い放ち、ヨネさん達の笑い声を背に受けながら建物を出て行ってしまったのだ。
何となく慌ててしまった私は、それでも追うべきなのか迷い、ここで追っても何だか瑠衣斗を更に笑いのネタにしてしまう気がし、グッと堪えてその場に留まったのだった。
そして、そのお陰か、ヨネさんから瑠衣斗の地元で暮らしていた時の話を、耳にする事ができたのだ。
「わざわざここまで来て、関心だなあ!!」
わはは、と盛大に笑うおじさんは、やっぱりとても渋くて嫌みがない。
ふわりと笑いかけるおばさんは、やっぱり瑠衣斗に似ている。
そんな優しい眼差しを向けられたおじさんも、ニコニコと楽しそうに微笑んでいる。
「僕も釣り友達ができましたよ。早速明日誘われました」
「あら本当にい?それは楽しんできてちょうだいね」
まんべんなく会話をするおばさんとおじさんも、本当に楽しそうだ。
こんな明るい食卓、私にとっては何だか贅沢に思えてならない。
相変わらず瑠衣斗は無口だけれど、かすかに口元に笑みを浮かべている様子を見ると、楽しんでいるようでホッとする。
やっぱりあまり実家へ帰らなかったり、話をしなかった理由は分からないけども、私から聞くのもなんとなく気が引けていたからだ。
「ひょっとして、ももちゃんはこの子に付き合わされるの?」
突然出てきた私の名前に、持っていた箸を落としそうになり、慌てて体制を立て直した。