いちえ
「お化け」
「言い直さなくていいし何でそんな事言うかなあ!?嘘つき!!」
薄暗さに目が慣れると、笑う瑠衣斗がすぐ目前に見えてくる。
何のためらいもなく布団へと潜り込んでくる瑠衣斗に、開いた口が塞がらない。
「はいはい、嘘だよ〜」
「…軽いね…相変わらず」
「最高の褒め言葉だな」
完全に布団に入ってしまった瑠衣斗から、こっそりと距離を取る。
何度か一緒に寝た事はあったとは言え、私に免疫がないのは変わらない。
それに、瑠衣斗は言わないけども、慶兄の事で話したい事もあったはずだ。
いざこうして、改めて2人きりになると、その事まで意識しだしてしまう。
でもきっと、るぅは何も言わないんだろうな……。
そう言う人だから。
目を合わせないように、視線を落とす。
でも変に思われたくない私は、そのまま上へと向き直った。
瑠衣斗の視線がビリビリと伝わってくるけれど、気付かない振りをする事で誤魔化すのに精一杯だ。
「なあ…もも?」
ポツリと呟くような瑠衣斗の声は、一瞬独り言のようにも思えるような物で、名前を呼ばれた事に気付かなかった。
「えっ?な、なに…?」
慌てまくってる私とは対照的に、余裕すら感じられる瑠衣斗は、やっぱり何も意識なんてしてないのかもしれない。
そう思うと、何だか少し虚しくもなってくる。
私、何やってんだろ。