いちえ
これが…ヒント……。
グッと抱きしめる強さに、胸が縮まって息苦しい。
押しつけられた瑠衣斗の体温と、筋肉質な固い体に悲鳴にも似た声が飛び出しそうになる。
主張するかのように、強く鼓動する心臓に、平穏を装う事なんてきっと無理だ。
「こうやって、俺はももに約束した」
口を開こうにも、まるで酸素の足りない金魚のようになってしまうだけで、言葉が出てこない。
グッと背中に回されていた腕から力が少し抜け、それがそのまま私の背中を優しく撫でる。
訳が分からないままで、身動きすらできず、ガチガチに力の入っていた事に気付いた私は、優しく背中を撫でている手の温もりに、肩の力を抜いた。
時折、髪の中に手を入れ、クシャっと頭を撫でられると、気持ちよさに目眩がする。
すぐ耳元に感じる瑠衣斗の息遣いに、背筋がゾクゾクとしなる。
「これでも思い出せねえ?」
耳元に響く、いつもよりも掠れた甘い声に、ギュッと目を固く閉じた。
思い出すも何も、こんな状態で頭を働かせる方が無理だよ〜!!
きっと、私が逃げる事なんて許してくれなさそうな腕の強さに、初めから抵抗しようなんて考えはなかった。
それでも私は、精一杯首を縦に小さく頷いた。
これがヒントって、余計に分かんないよ。
こんな抱き合っ……形で、約束なんて……。
そう思った瞬間、何か映像が頭にうっすらと、靄がかかったように流れた。
真っ赤な空に、黒い雲が混ざり合ったような景色。
降り出した雨と………
「…夕…焼け……雨…」