いちえ



何かに包まれ、降り出した雨から私を守っているようで。


私の目には、真っ赤な夕陽が映り、何だか物凄く心が痛くて……。



突然ふって沸いたかのような回想のような記憶に、戸惑う。



頭がキュゥッとして、締め付けられるような痛みに眉を寄せる。


何かに頭を締め上げられるような、痛みを誤魔化そうにも誤魔化せない程の痛みに、頭を瑠衣斗の肩と首の間に預けた。


「もも?」


思い出そうとすればする程、それを拒否するような痛み。


同調するような胸の痛み。



きっと私、思い出したくないんだ……。


でも、今まで思い出せなかった記憶がある事にも気付いた。



何か頑なに拒否するように、ずっと靄がかかっていた。


夢に見た靄がかかったような景色は、記憶と繋がっている。



誰かが耳元で、何かを言った気がしたが、やっぱりハッキリと思い出せない。


「おい、もも?体調悪いのか」



心配する声が、耳元から甘く響く。


それが何故か、思い出せない記憶とリンクしているような気がして、まるでデジャヴを体験したような感覚になる。


「何か…思い出したくても思い出せなくて……思い出そうとすると、拒否するみたいに……」



体が強張り、縋るように瑠衣斗の腰に腕を回した。


こんなにも拒絶反応をしてしまうのは、きっと家族に関わる事なんだろう。


生きていた感覚すらない、あの期間の記憶を、私は無意識に思い出したくないと、記憶から消してしまったのだろうか。
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