いちえ



「…ほしい……な…って」



そっと、頬に添えられた手のひらが、優しくなぞる。


くすぐったくて恥ずかしくて、首を引っ込めようと抵抗する私を、瑠衣斗は許さない。


頬から顎を持ち上げるようにして添えられ、もう俯く事もできなくなってしまった。



「うっ……友達…やめ…ないで……ほしい」



何だか見つめられる瞳が、熱っぽくて、キラリと光る。


全てのパーツと言うパーツが整っているもんだから、見つめられると逃げ出したくもなる程だ。


「ず、ずっと…友達で……離れないで……」


「おい、俺には選択肢はねえのか」


「え!?」



突然発せられた言葉に、異様なまでに驚いてしまった。


私、喋りすぎたみたい……。



「『友達』以外、選択肢はねえのかよ」



何だか少し…いや、怒っているような瑠衣斗に、口を噤んだ。


じゃあ何て言えばいいの?


だってるぅは、好きな人が居るんだから……。



「俺は、『友達』とでしか傍に居たらダメなのかよ」


「だって!!…だって…るぅは……」



言えない。言いたくない。


自分で瑠衣斗の好きな人に触れる事が、物凄く辛いから。



頭に体中の血が登るように、圧迫される。


何かが溢れてきそうで、それを必死に堪えようと、唇を強く噛み締めた。


顎を持ち上げられているせいで、顔は背ける事ができない私は、視線を合わせないように目を逸らした。
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