いちえ



「『友達』じゃなきゃ、ももと一緒に居たらダメなのかよって」


逸らした視線も、顎に添えられた手がそれすら許してくれない。


すぐに視線を戻されると、思い切り眉根を寄せた瑠衣斗が、じっと私を見つめる。


「何も言わねえんなら、俺から友達なんて辞めてやる」


……え…?



堪えようと耐えていた物が、崩壊しそうになる。


目を見開いて、瑠衣斗の瞳をしっかりと見つめた。


「辞める…の?」


「辞める」



胸の中がグチャグチャになってしまったように、掻き毟りたくなる。


鼻の奥がツーンとして、息もできない。


すぐ間近にある瑠衣斗の顔さえも、歪んでハッキリと見えなくなってきた。



「これ以上…近付いたら友達辞める?」



歪んでいるせいで、瑠衣斗が笑っているようにも見える。


自分の都合の良いように変換してしまい、呆れて堪えていた物が溢れた。




優しく触れられた唇に、目を見開いた。


啄むように、何度も着地する瑠衣斗の唇に、涙なんて乾いてしまいそうな程顔が熱い。



「もう…友達じゃ居てくれねーんだろう?」



唇を離さないまま、熱っぽく言う瑠衣斗に、思考回路がショートしてしまいそうになる。


何も言えない私に、瑠衣斗は優しく髪の中に指を入れ、気持ちを解してくれるようだ。



「ももが言ったんだぞ?これ以上近付いたら、友達辞めるって」
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