いちえ

胸麗





必死に瑠衣斗の唇を受け止める事で精一杯だった私は、瑠衣斗の動く気配に身を固めた。


片手で頭を抑えられたまま、もう片方の腕が背中から回され、服の中へと侵入する。


ザワザワと粟立つように、体がしなる。


直接触れられた背中から、体中が熱くなるようだ。


「…んっ…待ってるっ…」


「もう十分待ったんだけど」



熱っぽい瑠衣斗の声に、もう目眩を起こすどころではない。


何だか夢見心地で、もう少しこのまま夢を見ていたいとすら思えてしまう。


「あ、あの…」


「…ちょっとは黙ってろよ」


「違う…違うの。あの…」



ヤバい。このままじゃ本当に、瑠衣斗を止める気なんてなくなってしまう。


ちゃんと話がしたいのに。

私の気持ちも、るぅの気持ちも、好きという言葉だけじゃなく、きちんと知りたい。




そう思う反面、今話さなくても別にいいんじゃないか。なんて、理性が飛んでしまいそうだ。



唇が離れたほんの一瞬に、私は顔を横に力なく振った。


そんな事でしか意思表示できない程、私の体からは力なんて奪い去られてしまっている。



「…何なんだ。まだ俺に我慢させる気か」



ようやく少しだけ距離が取れた所で、腕は離される事はない。


見上げて瑠衣斗の顔を見ると、高揚したようにほんのりと赤く染まる頬に、熱っぽく潤んだ瞳とぶつかる。


それでもこうして、瑠衣斗はちゃんと私の話を聞こうとしてくれている。


無理強いはしない。瑠衣斗はいつも、私の気持ちを優先してくれていた事に、改めて気付かされた。



「あのね…聞きたい事……ある」


「聞きたい事…?」



訝しげに眉を寄せた瑠衣斗に、少しだけ怖じ気づいてしまいそうになる。


でも、今ここで言わなければ、私はきっともう聞くこともできなくなってしまうような気がした。



「えっと……るぅ…好きな人居るって言って…たよね…?」
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