いちえ



やだ…どうしよう……。


何でそんなに…甘いの。


今までの瑠衣斗からは想像つかないような言葉が、どんどんと紡ぎ出される。


どちらかと言うと、私と一緒で瑠衣斗も思った事はなかなか口にしないタイプだ。


言葉を選んで、頭の中で整理して、慎重に口に出すイメージだった。


でも、今の瑠衣斗は、感情が服を着ているようだ。


「何だよ、何か言えよ。俺の質問かなり重要なんだけど」


「…えっ?あ、ごめん」


「…で?慶兄とはしてねえってマジなのか」


「え!?だっ…だからしてないって!!もうその話はやめて!!」



したとかしてないとか、もうちょっとオブラートに包んで言ってくれないかな!?


恥ずかしすぎて顔を背けたくて、瑠衣斗の胸を押す。


グイグイと押す私と比例するかのように、背中に回された腕に力が入る。


「…ふう〜ん」



ニヤリと笑う瑠衣斗に、これはヤバいと直感的に思う。


どうせろくでもない事を言うつもりだ。


離れる事は出来ないと理解した私は、瑠衣斗の腕の中でくるりと体を転がす。


「お」



瑠衣斗に背中を向ける形になって、一瞬息を吐く。


腕はそのままなので、距離的には何も変わらない。


でも、瑠衣斗の顔が見えないだけで、少しだけ顔の熱が冷めるようだ。



「…もも?逆に触りやすくなったんだけど」



「え!?」



やっぱり私、恋愛初心者。
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