いちえ




「はあ…俺情けねえ」


今度こそ大きな溜め息をついてしまった瑠衣斗に、戸惑う。


「何で?何で…るぅが情けないの?」



顔が見えないから、瑠衣斗がどんな顔をしているか分からない。


何故そんなに落ち込んでいるのかも、分からない。


抱き締める腕は放してくれそうもないのに、何だか不安になってくる。



「ももは分からなくていい…」



力なく言うものの、何だか苦しそうにも聞こえて、どうかしてあげたくなる。


顔が見たくて、背中を向けた事を後悔した。


私は勇気を振り絞って、意を決して口を開く。



「そっち向いてもいい?」



ピクッと、本当に分からない程度に体が反応した瑠衣斗は、そのまま動かない。


何も言わないので、ゆっくりと振り向こうと動くと、途端に強く抱きすくめられてしまう。



…え?何で?



苦しい程に抱き締めてくる瑠衣斗の体が、異様に熱い。


その熱さに驚いたものの、動きを止めさせられた事もあり、私はそのままの状態で再び口を開く。



「あの…るぅどうしたの?」


「…男の子の事情です」



男の子の事情?

はい?


私の中で、結びつく物がなく、疑問に悩む。

そんな中、ポツリと瑠衣斗が呟いた。



「ダメ。今の俺…お前をめちゃくちゃにしちまう」


「…え?」



「キツい思い絶対させちまう。だから…こっち向くな」
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