いちえ
何て言うの…男の子の事情と言うのは、女の私からしたら見当もつかない事であって、それを我慢しているらしいるぅは、本当に大変そうであって……。
だから…何だか申し訳ない。
目も合わせる事ができないまま、私がそう言ったきり沈黙が流れる。
何だか気まずい雰囲気がするけれど、そう感じているのは私だけなのかもしれない。
「…ももが謝る必要はないんだけど」
ポツリと頭上から聞こえてきた声に、思わず伏せていた顔を上げる。
何だか照れくさそうな、バツの悪そうな顔をした瑠衣斗が、そのまま私を引き寄せるようにして抱き締めた。
温かい瑠衣斗の温もりは心地良いのに、私の鼓動は早くなる。
身長差があるものだから、ほぼ瑠衣斗の胸に顔を押し付ける形になり、瑠衣斗の鼓動を直に感じる。
瑠衣斗の優しい鼓動が、私の心を優しく宥めていく。
過剰に反応していた私の心臓の鼓動は、そんな瑠衣斗の胸の音に、落ち着いていく。
「俺が子供なだけ。自制心が足りないんだよ」
そう言うと、私の頭を包み込むようにして抱きしめ、髪に優しくキスを落とす。
「楽しみは、取っておいた方がいいだろう?」
クスクスと笑う瑠衣斗とは反対に、ようやく落ち着いてきた鼓動も、再び早くなる。
「た、楽しみって…」
顔を瑠衣斗の胸に押し付けているせいで、声がくぐもる。
もっと何か言いたいけれど、大人しく瑠衣斗の温もりに口を噤んだ。
頭を抱き込むようにしていた腕が、背中に回される。
その途端、ピクリと瑠衣斗の体が揺れる。
…どうしたんだろう?
固まってしまった瑠衣斗を不思議に思い、私は瑠衣斗を見上げた。