いちえ



こんな日に、何考えてるんだろう。


せっかくのおめでたい日に、一人だけ不景気な顔をしていても、雰囲気を悪くするだけだ。


ふと顔を上げ、美春のお母さんとお父さんが目に入る。



二人共、口元に笑みを浮かべているが、目には沢山のこぼれ落ちそうな涙が溜まっていた。



何だか胸がモヤモヤと疼き、すぐに視線を外した。


再びスクリーンを見上げると、“ずっと仲間だぜ〜♪幸せになぁ〜!!”なんてセリフ入りで写真が映し出されていた。



高校の頃、美春と俊ちゃんが付き合いだした日に、カップル誕生なんて黒板に書き、大きなハートの中で二人を囲むようにして撮った集合写真だった。


みんな、すごく良い笑顔で写っている。


そして私は、瑠衣斗に肩を組まれ、とびっきりの笑顔で笑っていた。



ただじっと、スクリーンに釘付けになるように見つめた。




『目が死んでるけどな』



『ずっと本気で笑ってねえんじゃね?』




いつか言われた、夏希の言葉が鮮明に蘇る。



私…めちゃくちゃ笑ってる……。



自分が本気で笑っている顔なんて、自分で見た事なんてない気がする。


今までの思い出を回想するような写真に、違和感を感じた。



確か…中学生…?ぐらいから、写真の中の私って……ちゃんと笑ってなかったよね?



今の写真は、家族が居なくなる前だけど、何で私はこんなに笑ってるんだろう。



……なんで…。


沢山の拍手と歓声の中、私はそんな疑問にじっとスクリーンを見つめた。


フッと画面が暗くなり、辺りに明かりが差し込み、考えている事を強制終了させられる。


「はーい!!では今から俊から美春にプレゼントでーす!!」



龍雅の声によって、会場は一気に盛り上がりをみせた。
< 40 / 525 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop