いちえ
愛慕
幸せそうな二人に、みんなが暖かい声を掛ける。
綺麗にアップされた髪を、頭から俊ちゃんの胸に埋めるようにして泣く美春に、笑みが零れる。
「あ〜あ、顔もぐちゃぐちゃなだな」
そう言って笑う瑠衣斗も、優しく笑みを浮かべていた。
「幸せそうだね」
結婚かあ…想像もできないや。
いいなーとは思うけど、実際自分が結婚するなんて全く想像もつかない。
それに……私には祝ってくれる家族も居ない。
結婚か……家族…か……。
私に幸せな家庭なんて持てるのかな……?
そんな事を考えていた私に、慶兄が口を開く。
ゆっくりと、諭すように。でもそれは、とても優しい声で。
「自分が幸せじゃなきゃ、周りの人間なんて幸せにできない。あの二人は、本当に幸せだと感じてるから、俺らにもそう見えるんだ。んで、見てるこっちまで幸せにしちまうんだなあ」
「笑っちまう程幸せそうだもんな」
二人を煽る龍雅と、そんな龍雅に苦笑いする宗太も、ニコニコと笑っている。
そっか…幸せって、こう言う事なんだ。
周りを見渡せば、みんなが笑っている。
こんなに沢山の笑顔を、私は初めて見たかもしれない。
私は、ちゃんと笑えているんだろうか。
私一人だけが何故か浮いているような気がする。
「ももを泣かせる程だもんなあ。やっぱ美春はすげえよ」
「…え?」
慶兄の言葉に、意味が分からす顔を上げた。
「なんつーんだろ?嬉し泣きじゃねえけど、素直にももが泣いたの初めてみた」