いちえ
蜜唇
いろいろな人と沢山話をして、いろいろな人からたくさん瑠衣斗の話を聞いた。
隼人君が、いつの間にか私にベッタリになってくれて、凄く嬉しかった。
少しだけ、名前がももで良かった。なんて思ったり。
そんな隼人君にまでヤキモチ妬いちゃう瑠衣斗に、みんなは本当に可笑しそうに笑った。
そんな瑠衣斗に、余計な事を言ってしまった龍雅と大輔さん。
龍雅は物凄く睨まれて、大輔さんはまた腕を捻られていた。
私と年齢のそう変わりのないような瑠衣斗の地元の仲間は、みんな小中学の頃からの先輩や後輩、そして同級生だった。
そのんな中、数人居るおばさんやおじさん達も、もちろん瑠衣斗に縁のある人達で、瑠衣斗の地元の仲間のご両親も居たりした。
私の家族にも、気に入られていた瑠衣斗。
この場所で、瑠衣斗の人柄が改めて分かった気がする。
「お前ら、コイツに馴れ馴れしいんだよ」
不機嫌さを全面に出す瑠衣斗に、私は苦笑いする。
そんな事言っちゃうから、素直すぎるから、みんな瑠衣斗をからかうのに。
「あの金髪がこんな事言うなんてなあ。ももちゃん瑠衣に何したんだ?」
豪快に焼酎を煽るおじさんが、楽しそうに私に笑顔を向ける。
大輔さんのお父さんで、なんととても有名な杜氏。そして大輔さんはそこの立派な跡取りだというから尚驚いた。
なるほど。焼酎が似合う訳だ。
「いえ…私は別に何も…」
そう答えるしかない私は、常に冷や汗ものだ。
「大輔とは目が合えばすぐ殴り合いだったのになぁ。お前も歳くったなあ!!だはは!!」
「…うるせー」
面白くなさそうに言う瑠衣斗は、そう言って私の隣へドシドシと畳を踏みしめて来ると、ドッカリと腰を下ろした。
「はーくんね、きょうももとねたい!!」
「ん〜?それはだーめ〜」
私の膝に乗って抱き付く隼人君に、瑠衣斗が少し含み笑いのような顔をして頭をグシャグシャと撫でる。
「なんで〜?」
残念そうに言う隼人君に、瑠衣斗が顔を寄せて笑った。