いちえ
いつからか私は、自分の居場所を失う事に恐怖を感じるようになっていた。
大切な人が居なくなってしまう。
それに直結してしまうんだ。
家族を失った事。
それと重なってしまう。
1人には慣れていたはずなのに、それは思い違いだったんだ。
ただのやせ我慢。
強がりにしかしなかったんだろう。
「んま、瑠衣斗に飽きたらいつでも来いよ」
「うん…ありがとう」
離れても、気持ちはみんな一緒。
私のそばには、みんなが居てくれるんだ。
「おまえ…うん言うな」
「お前言うな」
「そこ!?そこかよ!!」
でも、私はきっと、どんどん怖くなっていくのだろう。
初めて手にした温もりに、胸が切なくなりすぎて狂ってしまいそうな程。
瑠衣斗を失う事の恐怖が、今まで友達だった頃よりも、好きと言う気持ちだけで、比べ物にない位に大きく育っていく。
一体それは、どこまで大きくなっていくのだろう。
そんな事を考えてしまうと、泣きたくなるくらい不安に押しつぶされてしまいそうだ。
「美春も一緒に行くー!!」
「えっ、俺は!?」
「俊ちゃん?俊ちゃんは…お留守番してる?」
相変わらず、寝息をたてる龍雅と宗太の穏やかな寝顔に、美春と俊ちゃんの賑やかな声。
それを笑って見ている慶兄。
そして、私を抱き締めて離そうとしない瑠衣斗の温もり。
私はひょっとしたら、人より幸せ者なのかもしれない。