いちえ

残火





結局いきなり2人きりになってしまい、どう過ごすかも決めていなかった私達は、由良さんのお店にやって来ていた。


瑠衣斗はしぶったけれど、なんとなくこの雰囲気が好きだったし、何よりも由良さんや隼人君にも会いたかった。



「あはは。本当思いつきで行動しちゃうのは、血だね〜」



「…こっちとしては、毎回いい迷惑だよ」



「あんたが言える立場じゃないでしょう」



「え?そうか?」



由良さんの言葉と、瑠衣斗の言葉に、思わず笑ってしまう。


確かに瑠衣斗は、誰よりも行動が早くて、それがまた思い付きだからすごい。


クスクス笑う私を、瑠衣斗が眉を寄せて睨んでくるが、そんなのも構わない。



「んで?2人はいつまでこっちに居るの?」



「うーん。とりあえず祭りまでは居ようとは思ってる」



「お祭り…って、明後日じゃん」


そんな由良さんの言葉に、少し寂しさが募る。


ずっとここに居たいだなんて、そう思ってしまう。


由良さんやおばさん達と気軽に会えなくなってしまうと思うと、寂しくて堪らないんだ。



そしてもう一つ。


あの家に帰ってしまえば、やっぱり私は1人なんだと言う事を、改めて実感させられてしまうからだ。



「うん。とゆー事で、ももに合う浴衣なかったっけ」



「ん?ももちゃんに?あるわよ」



突然出てきた自分の名前に、驚いて視線を上げる。



えっ、浴衣?私?



「じゃ、着付けも頼める?」



「うん。いいわよ」




私の事なんて置いてきぼりに、話が進む。


そして、話はまとまってしまった。



……。



本当だ…思い付き家族だ……。
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