いちえ



窓の外を滲ませる程、雨足が強い。



時折吹く風によって、窓に叩きつけられるように雨が鳴く。



湿気の含まれてきた車内には、私と同じ様な学生と、数人の乗客者しかいない。



それぞれが音楽を聴いたり、携帯をいじっていたりで、個人の空間ができている。




あの時と同じような雨に、胸の中に空と同じ色をした雨雲がたれ込んでくるようだ。



私にとっては駆け足でやって来るような夏と言う季節に、憂鬱さが混じる。




今年で5年……――――。




未だに慣れない、あの家族の気配のない大きすぎる家。



一人になれば、私は毎回こんな事ばかりを繰り返し考える。


楽しい事がたくさんあるはずの私ぐらいの年代に、私のように何かに縛られている人も居るだろう。



人それぞれ。


辛い事や泣きたいような事に、大きいも小さいもない。



その人にとっては、潰されそうな程胸が痛むに違いないから。



こうして視界に入る人達にも、それぞれいろいろな事があるだろうし、あったに違いない。



人に歴史ありと言う言葉の意味は、そう言った意味なんだろう。



そう思っても、心が晴れない。


私の心をそっくりそのまま移したような空は、どんよりと灰色の雲で重く覆っている。


まるで分厚い壁のようで、先は全く見えない。
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