君への距離
「杏ちゃん、ボールちょうだい!」



「…え?」



「ボール、いいやつ!」

翼はいつものように穏やかな笑顔を浮かべて言った。





「翼!交代だ!!」
カズさんが翼の肩をつかんで言った。




翼、
「杏ちゃん!ボール!!」



杏、
「翼くん!!」




タクさん、
「翼、お前はよく頑張ったよ!あとは…」



「ボールちょうだい!」
翼は聞く耳を持たない。



「翼、いけるのか?」
カズさんが低い声で言った。



「行かせてください!」

翼は頭を下げた。



「よし、変になったらすぐに代えてやるからな!」
カズさんが微笑む。



「痛くなったらすぐに治してあげるからね!」
杏も微笑む。



翼はボールを受けとると右手を上げた。




(行ってらっしゃい…)


杏は翼の背中をまぶしそうに見つめていた。






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