君への距離
人もまばらな三塁側のスタンドにケンちゃんのお母さん、お父さんもいた。


ケンちゃんの遺影も大切にバックに入っている。




「あのピッチャーの子、すごいわね!」
ケンちゃんのお母さんはそう言って微笑んだ。


「ああ!ケンイチのやつこんな強いチームのセカンドやってたんだな。」

ケンちゃんのお父さんは心なしか少し誇らしげだ。



「あの子がここでやってるとこ、一度でいいから見たかったわね…」


「母さん!!ほら、今は応援しないと…ケンイチだってきっとどこかで応援してるさ!」

「…そ、そうね!ごめんなさい。」



(ケン…、あなただってみんなと一緒に戦っているのよね?)


息子の面影がベンチの杏に重なって、ケンちゃんのお母さんは堪えきれずに涙を流した。

ケンちゃんのお父さんがそっと肩を抱きながら、

「頑張れっ!!」

そう声を張り上げた。




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