君への距離
「翼!」
シオが駆け寄る。



肩が、という次元の問題じゃない。

翼の上半身全体が痙攣を起こしてガタガタ震えている。




観客たちと相手チームは一斉に騒ぎ出した。


レッドベンチは呆然として翼を見つめている。


杏は両手で目を覆っている。





主審がぐったりと横たわる翼を覗き込んで言った。



「まわれますか?代走出しますか?」




「オッサン、見りゃ分かるやろ!!!」
シオが主審につめよった。


「こんな状態でまわれるかよ!代走とか…そんな簡単に言うなや!!」
今にも手がでそうなシオを走ってきたカズさんが止めた。





「代走…笠松でよろしくお願いします。」
カズさんは静かに翼の交代を告げると、シオと一緒に翼を抱き抱えゆっくりとベンチへ戻っていった。






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