君への距離
翼はベンチに横たわりながら食い入るように試合を見つめた。



杏は隣で袋いっぱいの氷を翼の肩にあてている。


冷たくて杏の手も真っ赤だ。



翼の痙攣は止まらず、上半身がガタガタ震えていて、痛々しい。





(杏ちゃん…?)


ふと杏の顔を見る。


今にも泣き出しそうな苦しそうな表情だ。





「大丈夫だよ…」

翼が無理に笑ってみせた。


翼、
「…ってる」



杏、
「え?」


翼、
「似合ってるね…、ケンのユニフォーム。」

杏は照れてうつむく。


(自分が一番辛いはずなのに、優しい言葉をかけてくれる…。)







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