君への距離
(がんばれ!)

翼の背中を見送りながら杏は心の中でそっとつぶやく。





(きっと…)
杏は思う。

(きっと、


これから先どんなことがあっても、どんなボールを投げても、彼はさっきみたいに難なく受け止めてくれるんだろう…


涼しい顔して、



かっこよく、



たくさんの優しさで…)




「ずるいなぁ…」


杏はだれもいないベンチで一人、そっとつぶやく。




(君への距離…





勝手に思い込んで、勝手に落ち込んで、

そんなバカみたいなこと繰り返してたけど…




今なら言えるよ…)




涼しい風が杏の髪を揺らす。



帽子を押さえる。



『チームは家族』そう書かれたケンちゃんの帽子を。



今はみんなの帽子の裏にもそう書かれている。




動き出した二人の夢、二人いっしょの未来、

たくさんの人たちの愛に包まれて、歯車はさらに加速していくことだろう。



(…あたしのいるとこはあなたに一番近い場所なんだってこと!)


杏は空を見上げた。



いろんな想いが透けて見える気がして、慌てて目をこすった。



雲ひとつない青空が杏には滲んで見えた。





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